グローバル社会で求められるコミュニケーション力とは
今年度のEF EPI (英語能力指数)2018年の発表によると、今年の日本の順位は49位に転落。アジア地域の結果は、隣国の韓国は31位、中国が47位、台湾が48位となっています。2011年度の調査で14位だった日本の順位は転落を辿るばかりです。去る11月2日にEF渋谷オフィスにて、グローバル社会で求められるコミュニケーション力について、有識者の方々をお招きしパネルディスカッションを行いました。
[モデレーター]
白木三秀 氏/早稲田大学政治経済学術院教授・トランスナショナルHRM研究所所長
[パネリスト]
堂前 隆弘 氏/株式会社パソナグループ・グローバルアドバンテージ・シニアマネージャー
大六野 耕作 氏/明治大学 副学長(国際交流担当)
スティーブン・エリス/
EFエデュケーション・ファースト・ジャパン・コーポレートソリューションズ・ゼネラルマネージャー
取り残されていく先進国、日本の現状の英語力とは
国全体として日本の英語力の伸びに課題があることは、EF EPI の毎年の発表を見ると明らかです。なぜ現状を打破できないのか?EFのスティーブン・エリスによると、日本は高度経済成長期の成功体験から抜け出せていないのでは?という指摘がありました。給与が年々右肩上がりで伸びていき、国内産業だけで経済が潤っていた時代は、国外の企業と交流をせずとも人々は豊かな暮らしができました。その時代を経験してきた世代の多くが現在、企業のトップを務めています。年齢層によって語学力に大きな差があることが、EF EPIの調査結果より報告されており、世代毎の背景が語学力や語学習得に影響していることがわかります。
日本では男女間における語学力の差も顕著に
日々、大学生と接している大六野先生によると、現役の男子学生は固定概念が若干強い傾向に感じるとも仰っていました。新卒で就職することや、人生とはこうあるべき、といった固定概念が女子学生よりも強いのはないか?という仮説があるようです。
パソナグループの堂前氏によると、企業から海外の拠点へ派遣される日本人駐在員は年間で延べ20万人以上いるそうですが、女性の割合はその1%ほどだそうです。しかし、外務省の調査(2013年10月実施)によると、日本国外に住む日本人の総数は約126万人、そのうちの約48%が男性、約52%は女性と、国外に住む割合としては女性のほうが多いことが報告されています。同グループが実施した、海外勤務に関するアンケート調査では男女間で大きな差は見られず、多くの男性も海外就職に興味があるようです。これらのデータを総合的に考えると、男性の海外勤務は企業派遣によるものが多く、反対に女性は組織(企業)に属していなくても、自ら希望して海外へ出ているのではないか、との考察に辿り着きます。
EF EPI 2018の結果でも、男女間における語学力の差は、女性のほうが若干上回っており、日本に限ってはその差がより顕著であると調査報告がされています(下記図を参照)。
ミレニアム世代の英語力の底上げに必要なプッシュとは
出席者から挙げられた質問に対して、パネリストの回答は多岐に渡りました。
海外への興味関心を持たせる制度導入を、白木先生は提案しています。情報、娯楽、教育などあらゆるものが国内で入手できる時代だからこそ、留学や海外インターンシップの制度導入を検討すべきであると白木先生は仰います。
日々、大学生と接している大六野先生は、既存概念を壊し、新しい考え方やアプローチが若年世代に必要と仰っています。柔軟な考え方、アプローチ、そして失敗を恐れない(失敗が許される環境)が必要であると提唱しています。
堂前氏も同様に、学んだことを早期にアウトプットできる場が必要と話していました。英語力はそれほど高くなくても商談に参加したり、積極的にコミュニケーションを取ろうとするビジネスパーソンが、海外ではよくみられるそうです。外国語でのコミュニケーションができる人材は、国内外の就職市場では貴重な存在です。堂前氏の経験によると、若い時に海外勤務を経験した人は、その後40代、50代になってからのパフォーマンスが伸びる傾向にあり、これは、自分の長所と短所が海外生活を通じて浮き彫りになることが、後々のキャリアに活きているのでは、と同氏は語っています。
写真:左から堂前氏、大六野先生、白木先生、弊社のエリス。