日本の英語教育を考える
2016年2月2日、文部科学省から国公立の中学3年生、高校3年生を対象に英語の「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を測定した英語力調査の結果(速報値)が発表されました。
文部科学省は、中学卒業時の目標として「実用英語技能検定3級程度以上の生徒の割合を50%」と掲げていましたが、今回の調査結果から、中学3年生時点で3級程度以上の英語力を持つ割合は次の通りであることが判明しました。
中学3年生の英語力(3級程度以上の英語力を持っている割合)
「読む」 ・・・ 26.1%
「聞く」 ・・・ 20.2%
「書く」 ・・・ 43.2%
「話す」 ・・・ 32.6%
ご覧の通り、現在、50%を超える能力は一つもなく、「読む」「聞く」においては、わずか20%台と非常に低い結果になってしまっているようです。
はたして、日本の中学生、高校生たちの英語力を効率よく向上させるためには、一体、何に取り組むべきなのでしょうか?
ネイティブスピーカーとの会話機会を増すこと
今回の調査結果では、特に「読む」力、そして、「聞く」力が当初の目標よりも低い結果となりました。では、なぜ「読む」力と「聞く」力が特に低い結果となったのでしょうか。もしかすると英語を「言語」として学ぶ機会(触れる機会)が極めて少ないからかもしれません。
当たり前のことですが、みなさんもすでに承知の通り、英語は日本語同様、言語の一つです。会話や文章のように言葉にすることで、はじめて役に立つコミュニケーションツールになります。それを踏まえ、英語を教えてくれる学校授業はどうでしょうか。
もしかすると、多くの英語の授業は教科書の例文を使い、ついつい新しい文法、新しい単語を覚えることが中心となってしまい、実際に英語を言葉として扱うための学習になっていないかもしれません。
また「聞く」力が弱いのは、明らかにネイティブスピーカーと接する機会が少ないからだと言えます。ネイティブスピーカーの発音、話す速度、そして、ときに使うスラングに対応する力は、ネイティブスピーカーと会話を重ねない限り、身につけることはできません。そのため、聞く力が最も低い結果となったのだと推察できます。
教育現場改革にボランティアを起用する
では、どうすればネイティブスピーカーと会話する機会を増やすことができるのでしょうか?もしかすると、現在、英語の授業に動員が進むALT(外国語指導助手)の数を、今以上に増やすなどの対応策が必要なのかもしれません。
そして、その解決策の一つとして、外国人ボランティアスタッフの活用などが挙げらると考えられます。
南米チリの教育省は2003年に「English Opens Doors Program」を開始しました。「English Opens Doors Program」とは、チリ政府の英語改革プログラムです。この英語改革プログラムを通じ、チリでは英語を話すことができる外国人を教育の現場に採用。その他にも英語教師のために集中トレーニングやコンテストを積極的に開催しています。この改革プログラムにより、現在では2,000人以上の外国人ボランティアスタッフが教育の現場に導入されているそうです。
現在、法務省の統計データによると日本の在留外国人の数は年間210万人。全ての海外出身者が英語のネイティブスピーカーではないですが、日本の学校教育に大きな力を与える存在でもあり、今後、彼らとの協力関係が日本の英語教育にとって一つの解決策につながるかもしれません。